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⑤材料押出(熱溶解積層)について

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⑤材料押出(熱溶解積層)について

3Dプリンターについて学ぶ機会がありましたので、備忘録として自分なりにまとめてみました。今回は材料押出(熱溶解積層)の特徴をご紹介します。

積層造形の種類

国際標準化団体ASTMでは積層造形の手法を7つに分類していますその中でも、材料押出液槽光重合と呼ばれる2つの手法は個人向け3Dプリンターの積層原理によく用いられます。今回はこの2つの手法をご紹介します。

 

材料押出(熱溶解積層)

材料をノズルから吐出して造形します。ノズルが移動して任意形状に造形していきます。ヒーターで熱可塑性樹脂を溶かし、吐出造形するものが多いようです。サポート材を使わないでも造形できるため、中空構造の造形も可能です。本方式は特許切れにより、低価格な個人向け機種の普及が進みました。

造形材料はフィラメントと呼ばれる線材で供給されます。ノズルの位置出しは、XYZの三軸を直線的に移動するリニアガイド機構、ノズルを3つのアームで保持移動するパラレルリンク機構があります。

最適な造形条件(造形温度・速度)は造形材料ごとに異なり、試行錯誤が必要な場合があります。また、造形モデルの表面には積層時の凹凸が残りやすいです。

造形後はサポート部分をニッパー等で切り離し、表面をペーパー等で研磨します。複数ノズルを搭載した機種ではサポート部のみを薬品等で除去できる材料で造形することもできるようです。

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材料例

材料押出には加熱により柔らかくなる熱可塑性樹脂が用いられます熱可塑性樹脂を用いる場合、フィラメントは直径1.75mm2.85mmがありますが、日本では1.75mmが良く用いられるようです。フィラメントは材質ごとに適した造形条件があるため、造形時はこれらの条件を装置上で設定する必要があります。

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 ABSアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)

ABSアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの頭文字です。機械的強度のバランスが良好、着色も容易のようです。成分比で特性が異なります。加熱・冷却による収縮が大きいため、造形歪みには要注意

 PLAポリ乳酸

でんぷん由来の樹脂で、乳酸の重合体。造形温度はABSより低く、造形歪みも少ないが、耐熱性は劣る。金属粉や木材・炭素繊維などとの複合材もあります。

 ASAアクリロニトリル・スチレン・アクリレート)

ASAABSのブタジエンを、アクリレートに置き換えたもの、耐候性が改善

PA(ポリアミド)

米デュポン社製のものはナイロンと呼ばれます。石油由来の樹脂で様々な特性のものがありますが、押出造形ではPA12がよく使用されるようです。耐久性、耐衝撃性に優れます。

 PETポリエチレンテレフタレート

ペットボトルの素材、もとは透明な材料ですが、造形時の接合面や表面凹凸等により、透明性は低下します。強度、耐熱性等を活かして容器等の製造が可能です。 

PCポリカーボネート

ホスゲンとビスフェノールAから構成された、耐衝撃性に優れた樹脂です。

 PPSU(ポリフェニルスルホン)

スルホニル基が分子の結晶化を阻害するので、スルホン樹脂は非晶質(=透明)です。

耐熱性、耐薬品性に優れます

 PEI(ポリエーテルイミド)

耐熱性と強度に優れるイミド結合、加工性に優れるエーテル結合を有する非結晶のスーパーエンプラです。耐熱性、耐薬品性、強度に優れますが、ノッチ(切り欠き)があると応力集中により耐衝撃性が大きく低下してしまいます

 

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